忘れられない、手作りのプレゼント。
それはオヤジへ贈ったものです。
本来なら僕は親にプレゼントなどするようなガラではないのです。
なんか、照れくさくて・・・。
だから後にも先にも、自分の親に贈った手作りのプレゼントというものは、あれが最初で最後でした。
その話をします。
それは、まだ幼稚園に通っていたときのこと
あれは僕がまだ幼稚園に通っていたときのことでした。
父の日が近づいていました。
幼稚園では、
「手作りのプレゼントをお父さんにあげましょう」
ということで、普段からお世話になっているお父さんへの感謝について、先生が何か話していました。
もちろん、僕は上の空で聞いていましたが。
手作りのプレゼントということで、ネクタイが選ばれたのでした。
ネクタイのカタチをした無地の布
予めネクタイのカタチをした無地の布を手渡され、
「これに好きな色を塗ってください。みんなのお父さんは、何色が好きなのかな?」
先生は楽しそうにそう言いましたが、僕は何が何だか分からないまま、ネクタイに色を塗りました。
色を塗ることは好きでしたから。
できあがったものは、見るも無惨なネクタイでした。
茶色だとか黄色だとか、とにかくいろんな色が塗ってあったと思います。
先生は僕の作品を見てシブい顔をして黙ってしまいました。
それだけ僕が作ったネクタイはヒドいものだったのでしょう。
自分で作ったネクタイを手渡しました。
その夜、仕事から帰ってきたオヤジに、僕は自分で作ったネクタイを手渡しました。
「何だ、これ?」
オヤジは目を点にして訊ねました。
「ネクタイだよ」
僕が言うと、オヤジまで先生と同じく、シブい顔で黙ってしまったのです。
でも、それを大切そうにタンスにしまい込み、
「ありがとうな。父ちゃん、お正月にはこのネクタイするから」
と言っていました。
オヤジが本気で正月にそのネクタイをしめるつもりだったのかは分かりません。
なぜなら、オヤジはこの年の秋、仕事で行った旅行先の温泉で、事故で亡くなってしまったから。
手作りのプレゼントはいいアイデア
手作りのプレゼントはいいアイデアだと思います。
それは世界でたった一つしかないオリジナルなのですから。
僕が作ったネクタイは、あれからどうなったのか分かりません。